この一ヶ月間は、天候に悩まされました。
竹ドームも、皆が集まれる週末に雨が降り、延期、延期の連続で、ちょっとだけストレスがたまりました。
でも、そのおかげで、習ったマニュアルからいかに発展させられるかを考え続ける時間ができました。
さて、その過程で、私たちは、素晴らしい柿渋屋さんに出会うことができました。
皆さんは、「柿渋」というものをご存知でしょうか?
「柿渋」とは、しぶ柿の果汁を発酵させ、長期間熟成させた日本の伝統的な古塗料・染料です。
竹ドームを作るときに使う割竹の内側の白い部分に、自然塗料を塗ったほうが長持ちすると聞いて親御さんたちに相談していたときに、柿渋がいいんじゃないかというアイディアをいただきました。
そういえば、昔、家作りの時にちょっとだけ使ったことがあったなぁ。
そういえば、近くに柿渋屋さんの看板があったなぁ……。
というわけで、早速二人で伺ってみました。
昔からある大きなお屋敷の門のところに椅子を出して、気持ちの良い春の日差しを浴びながら、年配の男性が日向ぼっこをなさっています。
「すみません、柿渋を買いに来たんですが……」
すると、その男性はニコッと笑顔を浮かべて、私たちをお店の中に入れて下さいました。
あとでわかったのですが、その方は90代半ばで、もう150年も続いているというその柿渋屋さんの代表の方だったのでした。
淹れて下さった美味しい山城さんのお茶をいただきながら、私たちはその代表の方からたくさんのお話を聞かせていただきました。周りには、柿渋を塗った団扇や布、Tシャツ、バッグなどが飾られています。
私は、代表の方の言葉の中から、安全性に対する強い責任感と、自然の素材を使った商品を長い間作り続けてこられた誇りを強く感じました。
「自然の素材で作るものは、出来上がるまで時間がかかります。でも、時間をかければかけるほど、それは熟成されていくんですわ。」「今の時代は、何でもかんでも早さが求められてしまってます。そうでっしゃろ? でも、早く作ろうと思うて安全性を犠牲にするのは、心構えという点でどうかなと思いますなぁ。」
心に沁みました。そして、魂の奥から熱い感情が湧き上がりました。
ゆっくり、じっくり、焦らずに、正しい道を歩んでいこう、そう思いました。
代表の方にお礼を言って、柿渋塗料を買って帰り、早速竹に塗ってみました。
その淡い、うっすらとしたピンクの色は、周囲の自然に溶け込み、夕日に美しく、静かに光っていました。
子どもたちの学び場となる竹ドームの内側に塗られた柿渋が、きっと子どもたちを守ってくれることでしょう。
入学式まで、いよいよあと三日。
天候は大丈夫そうです。
果たして竹ドームの学び舎は出来上がるのでしょうか?
次回の報告をどうぞお楽しみに……。
2024年4月10日
栄 大和
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